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研究内容
私たちは数多くの製品に支えられて生活しています.それらの製品は材料を加工することで生み出されてお り,様々な加工法を適用することで製品の付加価値を 高めています.要求仕様,材料,生産量,コスト等に応じて,様々な加工法が使用されており,高精度および高品質を実現する精密加工技術は重要な役割を果たしています.例えば,放電加工やレーザ加工等の特殊加工は 精密加工を行う上で必要不可欠な加工法です.
マグネシウム合金のレーザ精密切断加工
マグネシウム合金は,実用金属の中で最も軽い金属であり,タブレット端末などへの適用が進んでいる.そのため,高能率な精密加工技術が求められている.本研究では,レーザ光による微細加工の可能性を検討するため,様々なマグネシウム合金の薄板に対して切 断加工特性を評価している.
レーザ切断加工の模式図を図 1 に示す.炭酸ガスレーザ発振器(波長 10.6 µm)より発振されたパルスレーザを集光レンズにより集光して加工対象物の表面へ走査することで,レーザ熱加工により切断した.加工点においては,熱影響の低減や溶融物を除去するために,レーザ光と同軸にアシストガス(酸素)を噴射した.図 2 は,汎用的なマグネシウム合金 AZ31B の薄板(厚み 0.5 mm)に対する微細形状の加工事例である.幅 0.6 mm 程度のハニカム形状が加工できることがわかった.現在,新たに Q スイッチパルスフ ァイバーレーザ(波長 1085 nm)によるマグネシウム合金の高品質なレーザ精密加工を目指している.
レーザ加工によるマイクロ流路デバイスの開発
近年,化学や医療分野において,マイクロ流路デバ イスの実用展開が進み,省試薬,省エネルギー,反応時間の短縮,反応効率の向上などの効果が期待されて いる.本研究では,炭酸ガスレーザにより,合成石英ガラス基板上にマイクロ流路を高能率に加工するこ とを目指している.
波長 10.6 µm の炭酸ガスレーザにより合成石英ガラス基板上に加工したマイクロ流路形状を図 3 に示す.連続微細ディンプル形状を有したマイクロ流路が 形成されていることがわかる.また,試作したマイク ロ流路基板を図 4 に示す.現在,図 5 に示す様に,流路底面に形成された連続微細ディンプル形状が流路内の流れに及ぼす影響について評価している.
炭素繊維強化プラスチックのレーザフォーミング
レーザは比較的新しい技術であり,近年では加工のみならず通信技術や医療分野など様々な場面で活用されている.その中でもレーザ加工におけるレーザフォーミングは金型を使用せずに容易に塑性加工が可能であり,材料に対する負荷を必要最小限に抑えられるといった利点がある.
一方,炭素繊維強化プラスチック(CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastics)は高強度かつ軽量であるという他の材料にはない優れた特性を有している.したが って,軽量化と燃費向上のために自動車や航空機へのCFRPの適用が急速に進んでいる.そこで,本研究では,容易に塑性加工が可能なレーザフォーミングをCFRPへ適用する新たな加工法を提案している.
本実験では,後加工が可能な熱可塑性プラスチックをマトリクス材とした CFRPの板材(厚み 1.0 mm)を使用している.また,炭酸ガス(CO₂)レーザ加工機を使用して,レーザ光を試料表面へ走査することで熱応力によるレーザフォーミングを行っている.
現在は,レーザ走査時におけるパルス波形を評価中であり,高品位かつ高精度なレーザフォーミングを目指している.
樹脂成型金型における金属加工面の離型性に関する研究
プラチック製品を低コストに大量生産する金型には,成形品の品質維持と連続成形に対する耐久性が必要であり,耐摩耗性,耐食性,離型性などの機能が求められている.一般的には,めっきなどの表面処理が適用されているが,離型性においては金型表面の加工面状態の影響も受けることから,表面処理のみでは十分に対応できないことがある.したがって,金型加工面状態と離型性の相関を調査して,金型加工によって離型性を改善する取り組みは重要となる.そこで,金型加工で汎用的に使用されている放電加工,切削加工, 研削加工などの加工面に対する離型性について定量的に評価することを試みた.
本研究で使用した離型力定量評価システムを模式的に図 8 に示す.金型加工面を想定した試験片(材質:SKD11, サイズ:27×30×t 5 mm)の加工面に対して熱硬化性フェノール樹脂を圧縮成形して,加工面と成形樹脂とが垂直方向に剥離する瞬間の最大引張荷重を離型力として測定した.図 9 は,形彫り放電加工面に対する離型試験結果の一例である.現在,放電加工面,切削加工面,研削加工面,研磨加工面に対して離型試験を実施している.今後,金型加工面の離型要因を考察して,高離型加工面を提案することを目指していく.
高能率表面処理法の開発
近年,新素材の研究開発は目覚ましく,高硬度材料や軽量材料など様々な材料が実用化されている.それにともない,新素材の加工技術に関する研究開発も進められている.例えば,高硬度材料を切削加工する工具においては,被削性や工具寿命の向上について多くの研究事例があり,一般的には,図 10 に示す様に CVD (Chemical Vapor Deposition)や PVD(Physical Vapor Deposition)による表面処理が適用される.しかしながら,処理プロセスが複雑であり時間を要することから 製造コストが課題となっている.そこで,本研究では, 新たな表面処理技術の研究開発に取り組んでいる.
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